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  • 佐々木 太一
  • No.MW001 佐々木 太一 TAICHI SASAKI

    初代マスター・オブ・ウイスキー。
    神奈川県横浜市旭区出身のバレーボール元日本代表選手。
    現在はサントリースピリッツ株式会社

受験のきっかけは?
2007年に社内資格の「ウイスキーアンバサダー」を取得した際に、スコットランドのいろいろな蒸溜所を実際に訪れたことで、他社の商品や世界のウイスキーにも広く関心を持つようになりました。そのなかでウイスキーコニサーの資格制度を知り、「エキスパート」「プロフェッショナル」を受けて無事合格することができましたが、さすがに「マスター・オブ・ウイスキー(以下、MW)」の資格は尋常ではなく難しいと思っていました。しかし、仕事が酒類の営業マンでもあり、消費者接点が非常に多いので、もしかすると「面白い論文が書けるかな?」と思ったのが挑戦したきっかけです。
筆記試験で苦労したことは?
やはり初めての試験で「試験に何かでるのかわからない」ことでしょうか。今までの自分の知識と官能能力のレベルでは合格できないのは想像つきますから、まずは、今までよりも現場(町場のお店)に出る機会を多くし、その際には「プロフェッショナル」の時よりも、色々なウイスキーを飲むようにしました。
また、丸暗記の知識だけで合格できるような資格ではなく、その土地の歴史・文化・風土といった背景や、作り手・こだわりなどウイスキーの周辺情報の全てを要求されます。特に難関だったのは、歴ストにも載っていない今の情報を集めること。新しい蒸溜所が出来たり買収劇があったりと、世界中で日々新たな事柄が発生しています。人に話を聞いたりネットで調べたり、かなり苦労して情報を収取しました。 調べれば調べるほど興味もわいて、自分の本当の知識になっていくように思いました。一方で、試験に向けてテキスト以上のことをどこまで知っておくべきか、そこは難しかったですね。
官能テストの感想は?
香りや味、最終の銘柄よりも。「短い時間で相手に伝える」ことの難しさを感じました。MWの官能テストは通常の机上での官能試験ではなく、自身で感じたことをわかりやすく人に伝えることですが、これはなかなかの難関だと思います。ただ、試験官も「人」ですから、いかにわかりやすく、かつ短時間で明確に説明できるかがポイントになったのだと思います。
日頃飲むウイスキーとその頻度
まず頻度ですが、ほぼ毎日ですね…。仕事上もプライベートもよく飲みますし、たまには二日酔いの時もあります(笑)。ただ、夜になると毎日琥珀色が恋しくなりますね。よく飲むウイスキーと言われるとなかなか難しいのですが、好きなものって早くなくなりますよね?そう考えると一番飲んでいるのは「白州12年」でしょうか。シェリーの利いた酒より、どちらかというとバーボン樽で、かつピートが程よく香るほうが好きですね。
無人島に3本だけウイスキーを持っていけるとしたら、何を持っていくか?
これは難しいですね~。無くなるのがいやなので、60度のカスクを3本!と言いたいところですが、モルトのカスクを持っていって、無人島でスチルを作り、グレーンを蒸留して、持参のモルトをちびちび混ぜて飲むかな…。帰れる確約があるのならやはり「白州12年」でしょうか…。
日本のウイスキー市場は今後どうなっていくと思いますか?
今、日本のウイスキー市場はハイボール人気の高まりによって久しぶりに活気づいています。まだまだこのトレンドは続くと思われますが、その先は、町場でも自宅でも、ハイボールだけでなくロックなど、いろいろな飲み方でウイスキーが楽しまれるようになっていくと思います。カテゴリーとしてはやはりブレンデッドが大きいですが、一方でスコッチや国産のシングルモルトがますます広がるのではないでしょうか。世の中の男性は好きなものについてかっこよく語りたいですからね(笑)。逆に言えばメーカー勤務の私にとっては、そういったシーンや場所をご提案するのが仕事ですね。
MWとして、これから心がけること、やってみたいこと
MWとしても、メーカーでのウイスキーの仕事に携わる人間としても、とにかくもっと市場にウイスキーを浸透させることが仕事だと思っています。称号に恥じないよう、ウイスキーに詳しい方にもそうでない方にも、全てのお客様へわかりやすくウイスキーの魅力を説明し、ウイスキーファンを増やしていきたいですね。
最後にこれからMWを受けようと思う人達へのメッセージを!
これはWEもWPもMWも一緒だと思いますが、MWは特に受験勉強の「知識」「テイスティング能力」だけでは受からないと思います。とにかくウイスキーを好きになること。もちろんアメリカ、アイルランド、カナダ、日本に関しても然りです。その土地の歴史や風土まで、自分なりにウイスキーに絡めて勉強をしていくと理解しやすくなってきます。「ペリーが日本に持ってきたウイスキーはどんな銘柄だったのか?」とか、「ウィリアム・フォレスはウシュクベーハを飲んでエドワードに立ち向かったのか?」など考えると、もっともっと楽しくなってきますよ。

『ウイスキー通信』No.2/P.32より引用